わたしがあなたへ『ハウトゥワープ』




今回は「ナユタン星からの物体X」の七曲目に収録されている「ハウトゥワープ」について考えていく。

この曲は動画になっている。そしておそらくだが、「アンドロメダアンドロメダ」と関係がある。「アンドロメダアンドロメダ」の歌詞については以前考察したものがあるので参考にしてもらいたい。まとまっていないが。

歌詞自体は歌詞カードかネット検索かでなんとかして見てほしい。

これから歌詞の解釈をしていくが、具体例をあげることはあっても基本は抽象的に捉えていきたい。

ここで書くのは筆者の「思考」そのものだ。あまりに的外れだと思われるような解釈ははずしておくが、「答え」だけを書くということはしないしできない。断定的に言っていたとしてもどこまでいっても推測でしかないためだ。しかしもちろん、他の解釈を否定するものではない。

というわけで、考察を始めよう。

今回は曲タイトルから考えてみたほうがいい気がする。

「ハウトゥワープ」は、歌詞にある通り、「HOW TO WARP」のカタカナ表記だろう。他に読み取りようがない。

ワープを単語として調べるといろいろな意味が出てくる。ゆがみとかねじれとか。でもそう考え出すと迷宮入りするので、シンプルにSF用語のワープでいいだろう。一瞬で離れた場所に移動するアレ。

ハウトゥのほうも、シンプルにハウツーと捉えていいはず。ハウツー本といえばこういうときにはどうすればいいかということを、なるべく簡潔にまとめるような本のことだ。

だから単純に考えれば、どのようにしてワープするのか、というタイトルだということになる。

そうなると当然の問いが生まれる。

どこにワープするのか。なぜワープしたいのか。ワープするとはどういうことなのか。HOW以外の部分の疑問だ。そのあたりを念頭において、歌詞の中身を考えていこう。

「わかりかけてるナイショの言葉」「ひとつ唱えてあなたのとこまで」

わかりかけてると言っているのだから自分のことだろう。そして内緒と言う以上は「あなた」には言っていない。

その「言葉」それ自体は頭に浮かぶのだが、それを実感として「わかりかけて」いるから、それをいわば自分自身で確認するように「唱えて」、ということだろうか。

感情を表す言葉は自分がその状態にならないと実感できない。だから「わかりかけてる」ということはその「言葉」がどのような感情を示すのかを実感できるような体験をしている状態にある、と推測できる。

ナユタン星人の歌詞には恋愛のものが多い。そして後の歌詞にも「LOVE」という単語が出てくる。ということは、言葉の中身についてもいくつかに絞れる。

さすがに明らかだし、しかも歌詞の中でわざわざぼかされているので具体例は挙げないことにする。そのほうが風情があるように思う。さんざん歌詞を解体してきておいて今更な気もするが。

「光速を超えて跳んでゆく」「目眩の中に感じたのギャラクシー」

現実的な解釈をするとなると、物理的には無理なので心情的なところで考えるしかない。

がしかし、いまいちよくわからない。

正直、この曲の歌詞を単体で考えるよりも「アンドロメダアンドロメダ」の歌詞との関連性から読み解いたほうがいい気がする。

まず、「ギャラクシー」は「アンドロメダアンドロメダ」の解釈の中で、恋心のことなのではないかと解釈した。

そして「アンドロメダアンドロメダ」という曲自体の解釈としては「あなた」の中の「アンドロメダ」に「わたし」が応えておくれと願う曲なのではないか、と考えた。「アンドロメダ」=「ギャラクシー」=恋心だ。しかし「あなた」の中にそれがあるのかどうかはわからない。

そしてさらに、光や電気などをイメージさせるような単語は恋心からくる行動のことなのではないかと解釈していた。

と、なるとだ。

「光速を超えて」という部分はそういう行動よりも速く、というニュアンスを感じるので、そのくらいに強く「あなた」へ向かっていこうとする心情を表しているのではないだろうか。

それほどまで強く速くという心情であるがゆえの、「目眩」だろう。つまり、冷静ではいられないような状態であるということだ。「ギャラクシー」が恋心なら、「わたし」のなのか「あなた」のなのかが重要だが、「あなた」のほうははっきりしない。

だが、なんとなく「わたし」の心情は「アンドロメダアンドロメダ」の歌詞よりも積極的になっているようにも思える。

「時空歪曲任せなさい」「募る想いは粒子に変わるの」

SFの描写にヒントがありそうだ。つまり、「粒子に変わ」ったことにより「時空歪曲」が可能になる、というような意味合いとして捉えることができる。

「時空歪曲」はワープのための方法のことだろうから、「あなた」へ向かうための方法ということになる。というか、「あなた」の「ギャラクシー」かもしれない。

「あなた」の中にあるかもしれない「ギャラクシー」へとワープするために「募る想い」が「粒子に変わ」ったことにより可能になった「時空歪曲」を利用し、「光速を超えて跳んでいく」、というようにまとめることができるだろう。

「想い」が「粒子」になるというのは、具体的じゃないものが具体的な物へ変わる、というようなニュアンスだろう。どうして変わったのかといえば、「募」ったからだ。

つまり「想い」はありつつも具体的で明確な行動が取れなかった心情が、状況が変わらないことで焦りなど様々な感情が「募」っていった結果、これまでと同じでは駄目だと思い、何かしら具体的で相手に明確に伝わりやすいであろう行動を起こそうと思った。ということではないだろうか。

「時空歪曲」は、そこからの流れと字面の印象などから考えると、今までとは異なる恋愛におけるアプローチの方法のことなのではないかと思う。「ワープ」はいわばショートカットのことなので、大胆に距離を詰めにいくような。

「放課後の秘密ふえてゆく」「月のない夜にあなたに急接近」

となると、ここの歌詞はわりとわかりやすい情景描写として捉えられるのかもしれない。

「放課後」も「秘密」も「アンドロメダアンドロメダ」の歌詞に出てきた単語だ。

「放課後」で、かつ「秘密」であるのだからおそらく二人だけでいる時間が「ふえて」いるのだろう。

「月のない夜」は、意味合いとしては、暗いために誰からも見られることがない、ということだ。しかし「あなた」はいる。二人きりであるからこその、「急接近」。もちろんこの言葉には恋愛的な距離感のことも意味に含めているはずだ。

「HOW TO WARP」「WARP TO WARP」

歌詞に繰り返しがあるのでまずはこの二つの文。とはいえ先のほうは簡単だ。どうやってワープするのか。しかし「WARP TO WARP」のほうに果たしてちゃんとした意味があるのかは、正直わからない。

ちなみにある翻訳サイトではこうなった。「反るように反りなさい」。絶対違うと思う。

しかし「WARP」という単語には確かに「反る」とか「ねじれる」だとかいう意味があるようだ。少なくとも片方の「WARP」はいわゆる「ワープ」のことだろうから、たとえば「ワープするためにねじれる」みたいなことだったらなんとか意味が掴めないこともない。

今までとは違うことによって「あなた」に接近しようとする行為の表現として。

「今あなたの星まで」「すぐに跳んでゆくから」

ここまでの流れを踏まえれば、「星」を言い換えれば意味はわかりやすいと思う。すごく雑に言うなら、「心の中」ということになるだろう。しかし意外と一言では表しにくい。断定もしにくい。なので、これ以上はやめておこう。なんとなくはわかるんじゃないかと思うし。

意外とナユタン星人の歌詞の中に出てくる、一文字だけの「星」は意味をはっきりと捉えにくいことが多い。

「でもわたしは知らない」

何をかといえば、その直前の「HOW TO WARP」とその直後の「HOW TO LOVE」の両方なのだろう。

どうやってワープすればいいのか。どうやって愛すればいいのか。と日本語で書くと微妙に違う気がする。

おそらく具体的にどんな行動を起こせばいいのかという部分と、そもそもその感情をどう扱えばいいのか、というようなニュアンスが絡まりあっているのではないかと思う。

そのどちらに関しても、「おしえてくれたら」「いますぐ」「あなたまで」「WARP TO WARP」なのだと。

逆に言えば、行動は起こそうとしているしもしかしたらもう何かしているのかもしれないが、まだ辿りついてはいないということだ。「あなたの星まで」は。

「忘れかけてた最初の言葉」「あなた唱えてわたし浮かんでた」

「最初の言葉」は、具体的な意味はなかなか難しい。おそらく、本当に初めて会ったときの言葉というより、「わたし」が「あなた」を意識するきっかけとなった言葉、というほうが近いのではないかとは思うのだが。

「あなた唱えて」は、時系列的に現在なのか過去なのかは微妙なところだ。少なくとも過去にそれがあったのは間違いないだろうけれども。それによって、「わたし」が「浮かんでた」。ここが過去形なので、やはりここは回想シーンなのかもしれない。

「浮かんでた」はニュアンスとしては、「ふわふわしていた」と捉えられる。すごくロマンのない言い方をすると、「浮ついていた」みたいな。いや別にこの言葉自体は悪い意味じゃない。はず。

「ゆっくりと星が廻り出す」「校舎の裏ではじまったミラクル」

この「星」が先ほどの「星」と同じ意味だとするなら、「あなた」と「わたし」の心の状態やそれによる関係性が変わり出したことをこのように表現しているのだろうと思う。

というのも、「廻」るという漢字には場所の移動の意味がある。その場で「回る」のではないので、自分一人の心情の話ではなく、状況や相手を含めた変化なのだろう、というわけだ。

「校舎の裏」もまた「アンドロメダアンドロメダ」にある歌詞だ。そこで「はじまった」ということは、現在までの道筋はそこから続いているのだ、ということ。

そして、「ミラクル」はこれもまた「アンドロメダアンドロメダ」の歌詞の、「奇跡体験」と同じことを示しているのではないだろうか。「あなた」を特別視するようになったきっかけだ。

ここまでが、すべてがそこから始まったのだという、過去の回想シーンとなっているのだろう。

「渡り廊下」「異世界とリンク」「頭こんがらがって緊急事態」

急に「渡り廊下」と言われるとすごく困る。何とも関係してないし。

しかし普通に建物と建物の間の「渡り廊下」だと考えると「校舎」とどこかを繋ぐものだろうと思うのだけれども、この後の歌詞で「12時」とあるし、前の歌詞には「月のない夜」とあるので、おそらく時間帯は夜12時ということだろう。

学校のシチュエーションでも確かに今までの歌詞をそのまんま捉えることはできる。

しかしやはりここではもう少し踏み込んで考えたい。

「渡り廊下」は建物と建物を繋ぐ。これは「わたし」と「あなた」の間にある道のりだと考えることもできる。それが、「異世界とリンク」するということは、つまりその道が別のまったく違う場所に繋がってしまったということ。

だから、その状況を受けての「頭こんがらがって緊急事態」ということなのだろう。

つまり物理的な空間における状況や具体的な現象の表現と、心情や抽象的な状態の表現が、同時に描かれているのだ。

「12時のベルが響いてる」「赤い光が左へ急旋回」

時間帯の描写の意味もあるのかもしれないが、より重要なのはそれが象徴的に表していることのほうだ。

「12時のベル」というフレーズから思い出されるのは、シンデレラのあれだろう。魔法が解ける時間帯。と考えるよりもむしろもっとシンプルに、「帰らなければならない状況に陥った」ことの表現として捉えたほうがわかりやすそうだ。

たとえばシチュエーションが深夜の校舎なら、警備とか警報とか通報とか。親からの連絡なんかでもいいかもしれない。忍び込んでいる身からすればまさに「緊急事態」だ。とはいえこれもまた断定できるものではない。

ともあれとにかく状況が大きく変わったことだけは間違いない。一時撤退、退散だ。

「赤い光」は「アンドロメダアンドロメダ」で、「赤色光ったエレキテル」とあるので、それと関係した歌詞だろう。

おそらく、ここまで積極的な行動を取ろうとしてきた「わたし」の心の状態の表現だ。「赤」という色のイメージからの、「積極的」「過激」というような。

しかしそれが「左に急旋回」する。なぜ左なのかは、わからない。しかし進む方向を急激に変えたのはわかる。

ここまで、それ以前よりも積極的な行動に出ようとしていた「わたし」だが、この「緊急事態」を受けてそれを急いでやめざるを得なくなった。

ということは、「あなた」にはまだ届いていないということだ。

それがこの先の歌詞でも表現されている。

「まだあなたの星まで」「少しだけ遠いの」

ここはもう解釈する必要もないだろう。

「ずっとあなたが知らない」「HOW TO LOVE」「おしえてあげるよ」

「ずっとあなたが知らない」のは、「わたし」が「あなた」に対して抱いている「HOW TO LOVE」の心情や行動のことだろう。この感情をどうすればいいか。どう行動すればいいのか。その「わたし」の「想い」を丸ごと、「おしえてあげる」のだという心境に至っているのだろう。

だから、「ワープで」「いますぐ」「あなたまで」「WARP TO WARP」

と言っているのだが、しかし最後。

「もうちょっと」「HOW TO LOVE」「まだ知らない」

というように、「わたし」はまだそこへの答えも出せてはいないし、「あなた」に届いてもいない。

つまり、「わたし」の想いを今までよりも積極的に伝えようしている心情の表現と、そこからの行動、そしてその失敗というストーリーが表現された歌詞だと言うことができる。

しかし、「アンドロメダアンドロメダ」と明確に異なるのは、失敗してもなお諦めていないということだ。

「ワープ」がショートカットなら、その方法はやや力技な印象を受ける。おそらくはそれが失敗の要因なのかもしれないが、「わたし」がそうした理由ははっきりしている。

「今あなたの星まで」「すぐに跳んでいくから」

これをしたいというところに尽きるだろう。この感情がやや暴走気味になっているという中での物語として、この曲の歌詞は解釈できる。

シチュエーションは夜の学校かもしれないが、よく見てみると現在の場所の描写として読めそうなのは「渡り廊下」しかない。時間帯は夜で良さそうだが。要は「月のない夜」の物語なんじゃないか、と。

切なさは、本人が積極的かつ諦めていないというところもあってやや控えめな印象だ。

内容的には、「アンドロメダアンドロメダ」が中篇で「ハウトゥワープ」は短編という感じ。中身も続きのような気がする。

となると気になるのは、この物語の続きが今後あるのかどうか。

しかし残念ながらというかなんというか、次回は「アトミック恋心」となる。

正直なところ、「え、解釈? するの?」と自分でも思うところはあるが、スルーはしたくない。しかも難しいのかどうかすら現状判断がついていない。

まあ、がんばろう。