あなたもわたしも宇宙人|ナユタン星人『エイリアンエイリアン』歌詞解釈・考察




今回は「ナユタン星からの物体Y」の一曲目に収録されている『エイリアンエイリアン』の歌詞について考えていく。

「Y」についてもずっとやろうとは考えていたのだが、なかなか始められないでいたところ、ありがたいことにリクエストを頂いた。全曲考察するのにどの程度かかるのかはわからないが、やっていこうと思う。

動画になっている曲であり、ナユタン星人の代表曲と言ってもいいかもしれない。この曲からナユタン星人を知ったという人も少なくないのではないか。

そういえばアルバムタイトルについて忘れていたことがある。「Y」はもちろん「X」の次だからなのだろうが、そもそも「ナユタン星からの物体X」は、「遊星からの物体X」という映画タイトルから来ていると思われる。アメリカのSFホラー映画だ。「X」は一文字で未知の物事を示す。遊星とは惑星のことらしいが、原題は「The Thing」なので「物体」だけだ。さすがに日本語で「物体」だけのタイトルでは内容がまったくわからないので、語感なども考慮してそういう邦題になったのかもしれない。

有名な映画タイトルを連想させるし、宇宙やSFに関連することが一目でわかるというところもアルバムタイトルとしてそのようにした一つの理由なのかもしれない。もちろん推測でしかないが。

歌詞自体は歌詞カードかネット検索かでなんとかして見てほしい。

これから歌詞の解釈をしていくが、具体例をあげることはあっても基本は抽象的に捉えていきたい。

ここで書くのは筆者の「思考」そのものだ。あまりに的外れだと思われるような解釈ははずしておくが、「答え」だけを書くということはしないしできない。断定的に言っていたとしてもどこまでいっても推測でしかないためだ。しかしもちろん、他の解釈を否定するものではない。

というわけで、考察を始めよう。

まずはやはり、わかるようなわからないようなという感じの用語を調べるところからだ。

「篠突く雨」

激しく降る雨のこと。細かく群がる竹や笹の総称を「篠竹」といい、篠竹を束ねて突き下ろすように細かく激しく密度高く降ってくる雨のことらしい。

「テレパス」

言語、身ぶり、表情などに寄らずある人の心の内容が直接他の人の心に伝達されることを、テレパシーという。テレパスの説明ではない。テレパシーは心の内容を伝える超能力という説明でだいたい合ってると思うのだが、テレパスのほうは調べるととりあえず二通り出てくる。一つはテレパシーを使う能力者のことを指す言葉として。もう一つは、例えば能力者が相手に自分の考えていることなどを伝えたり相手の考えていることを読み取ったりというのが、テレパシーという能力であると多くの場合はされるのに対して、テレパスは相手の心が自分に伝わってくることのみを指す、という感じの説明だ。要は相手の考えていることがわかる、というような感じだろうか。

「コンタクト」

接触、連絡。前もナユタン星人の歌詞で調べた気がする。

「タイトロープ」

綱渡りに使う張り綱。 危険を冒すこと、危ない橋を渡ることの例え。

「ディスコミュニケーション」

和製英語らしい。ディスは英語で欠如、コミュニケーションはまあなんとなくわかると思うので、コミュニケーションが欠如した状態を指す。意思伝達ができないこと。相互不理解という言い方も。

「特異点」

1 .曲線・曲面上で、接線や接平面が存在しないか二つ以上ある点。 2 .重力の固有の大きさが無限大になってしまう点。コトバンクより引用。わからないが、まあわかった。

「シンドローム」

症候群、あるいは問題を引き起こす一連の現象や行動など。

「グリモワ」

グリモア、グリモワールとも。グリモワールはフランス語で魔術書のこと。意味はそれと同じでいいだろう。

「サーチライト」

特定の方向に強力な光線を投射する照明装置。前にもナユタン星人の歌詞で出てきたが、調べなかった気がする。

念のため「エイリアン」も。

外国人やよそ者のような意味で使われていたが、映画の影響で宇宙人や地球外生命体を指す使い方が今はほとんどになっている。

だいたい言葉の意味についてはこんなところだろうか。ナユタン星人の歌詞で前にも出てきた単語の意味と同じなのか違うのかは考えてみたいところだ。あとはもしかしたら、同じ単語を使う理由もあるかもしれない。例えば歌詞の世界観が共通しているとか。

「ゆれる街灯」~「恋を知りました」

街灯がゆれているのは、激しい雨が降っているからだろう。先ほど調べたとおり、「篠突く雨」というやつだ。これはまずは単純に情景描写として捉えていいだろうと思う。ただし、「ゆれる」は続く歌詞の「振れる」に対応している。要は同じような意味だということで、そして「振れる」のは「感情」だ。

次の「感覚のテレパス」の意味は、相手の感覚がわかるということでいいだろう。

「迷子のふたりはコンタクト」という歌詞が、おそらく実際に起きた事柄。コンタクトという言葉がなんともいろんな捉え方ができるのでこうと断言しにくいのだが、「ココロは 恋を知りました」と続くので、ただ出会ったというよりもっと心情的な意味合いでの接触なのだろう。

というのも、「ゆれる街灯 篠突く雨」という歌詞は心情描写としても捉えられるためだ。振れたりゆれたりするのは本人たちの感情であって、また激しい雨も心境や状況を示しているのではないか。

映画でもアニメでもドラマでもいいが、悲しいシーンに雨が降っているようなもの。天候でそこにいる人物の感情を表現しているわけだ。

だからこそ、「迷子のふたり」なのだ。二人ともが同じような心情であるからこそ、「テレパス」のように通じ合う。通じ合ったからこそ、恋を知ったということだろう。

「タイトロープ」~「胸騒ぎ」

「タイトロープ」は単語のみなので、いわゆるロープそのものではなく危ない橋を渡るような行為を指す歌詞だろう。「ツギハギの制服」の意味はなかなか掴みづらいが、直前の「タイトロープ」と直後の「重度のディスコミュニケーション」の歌詞と合わせて考えると、制服を着るような規律のある場所に、何とか無理矢理にいるような状態だろうか。別の言葉で言うなら、取りつくろうだとか。

制服という単語とナユタン星人の今までの歌詞傾向などから、やはり学校が連想される。となると、「重度のディスコミュニケーション」というのは二人の間のコミュニケーションのこともあるかもしれないが、二人と周囲の間にあるコミュニケーション不全のことを指しているのかもしれない。「迷子のふたり」という歌詞が先にあったため、二人ともが学校的な空間の中で、それぞれに迷子のような心境に陥っていた、というような意味合いではないだろうか。

「眼光」が「赤色にキラキラ」しているという歌詞から具体的な状況や行動を読み取るのは難しいが、まず重要なのは「赤色」だろう。これも以前考察した覚えがあるが、赤から連想できるのは、危険なことや過激なことだ。アニメなどの表現でもともとは赤くなかった眼が赤く光るような描写があったなら、大抵はそれまでより極端で攻撃的な行動を取ることだろう。リミッターを解除するとか、キレるとか。

そしてそれを受けての「ナニカが起こる胸騒ぎ」。つまりその「ナニカ」は誰かの行動によって起こる、起ころうとしていると読める。

「エイリアン わたし」~「気持ちは トキメキ」

一回目のサビの前半部分。エイリアンと言えばやっぱり宇宙人だろうが、曲のタイトルになっていることもあるので、早々に決めつけるのはやめておこう。実際この後の歌詞でいろいろなヒントが出てくるので、それらを見てから改めて考えてみたほうが良さそうだ。

「わたし エイリアン」の直後の歌詞もヒントになる。「あなたの心を惑わせる」とあるが、つまりそういう存在が「エイリアン」であり、かつ「わたし」なのだと言っているわけだ。

「交ざりあう宇宙の引力で」から、「感じてる気持ちはトキメキ」はもちろん恋愛の中での心情が表れている歌詞だと思うが、この曲単体で考えると「交ざりあう宇宙」の意味を捉えるのが難しいというか、なんとなくはわかるけどちゃんとはわからない、みたいな感じになる。この点も後でまとめて考える。

「エイリアン あなたの」~「トキメキ スキ」

一回目のサビの後半。「あなたの エイリアン」である一つの理由として、さっきの「あなたの心を惑わせる」存在としていることが挙げられる。その方法という点については、「あなたに未体験あげる」とあることからなんとなく想像できる。

とはいえ、「未体験」の内容は恋愛のシチュエーションの範囲内であれば何でも当てはまり得るのだと思う。デートの誘いから、手を繋ぐ、相合傘をする、実際のデート、キス、等々何でも。要するに「あなた」にとっての「未体験」であれば当てはまるのだから。

というか、それは必ずしもそういった行為である必要もない。重要なのはやはり心情であって、どんな体験であろうと、あるいはそれが別に今までにしたことがあった体験だとしても、それによりいつもとは異なる感情を抱いたなら、それだけでも「未体験」だ。

「未体験」の直前の歌詞、「引きあう心は逃れられない」のは、相手のことが頭から離れないような状態を表現しているのだろう。それと引力をかけているわけだ。

「トキメキ スキ」はまあいいとして、その手前の「異世界の果てまで」だ。「異世界」という単語は前にも歌詞で出てきたが、今回の歌詞のニュアンスを考えると、おそらく相手の心象世界のことをそのように表現しているのではないかと思えてきた。

ただし、解釈は多重に可能だ。まず、「たとえ異世界の果てまで行ったとしても」「スキ」とも捉えられるし、自分ではない相手の心の中にある世界のことを異世界と言っているのなら、つまり自分とは違うものの見方や感性のことを示していて、それがどこまでいっても「スキ」なのだとも捉えられる。要は「あなたの異世界であれば端から端まで」「スキ」というような解釈もあり得る。

さらには、この世界どころか「異世界の果て」まで届いてしまうくらい気持ちが大きくなっているというニュアンスも含んでいるかもしれない。

しかしここで一度振り返りたいのは、「異世界」という単語は『ハウトゥワープ』の歌詞にも出てきたというところだ。そちらの歌詞では、「異世界」に触れたことで方針を急転換して何か直接的なアプローチをしようとしていたのをやめた、というような解釈をしていたのだが、この「異世界」が「あなた」の視点や感性のことだとすると、そちらの解釈にも影響があるかもしれない。

たとえば、自分と同じことを思っていると勝手に思っていたが、いざ直接聞くと若干認識にズレがあった、などということはよくある。

このタイミングで言ってしまうが、『アンドロメダアンドロメダ』と『ハウトゥワープ』、そして今回の『エイリアンエイリアン』には繋がりがあると思う。この順番で話が続いているような印象を受ける。

であれば、前回『ハウトゥワープ』では「あなた」の「異世界」に触れて混乱してしまったが、現在、『エイリアンエイリアン』ではそれを乗り越えて「異世界の果て」まで「スキ」だと言っているという、次の段階での物語になっているのではないかと思われる。

『アンドロメダアンドロメダ』では「あなた」と逢えないhttps://najiitishi.com/music/andromedaandromeda.html

わたしがあなたへ『ハウトゥワープ』https://najiitishi.com/music/howtowarp.html



「点灯と消灯を」~「感応性本能」

ここの解釈がこの曲で一番の問題だ。何せ、何を言ってるのかがわからない。それと、一行ずつ読むよりも読み終えてから振り返ったほうがまだ理解しやすい気がする。

しかし、とりあえず一回は順番に見ていこう。「点灯と消灯を 繰り返している蛍光灯」という歌詞は、情景描写のようにも思えるが、以前からナユタン星人の歌詞にある電気や光に関する言葉は何らかの感情から来る行動のことを示していると解釈しているので、今回もそういう方向で考えてみたい。

その場合、「点灯と消灯を 繰り返している」というのは、行動をしようかどうか迷っているような状態が思い浮かぶ。

一方でやはり情景描写として考えると、切れかけている蛍光灯が点いたり消えたりしている場面が想像できる。このとき、「蛍光灯」であることからなんとなく、何かの施設の中にいるような印象を受ける。かつ、ホラーであれば次に何かが起こる前触れのようなシーンだ。おそらくそういった想像を掻き立てるための歌詞でもあるのだろう。

次の、「超常な混沌」をどう捉えるべきかが難しいが、その後に「あなたを蝕んだ」とあることから「あなた」側の何らかの体験であると考えられるので、一つは先ほどのサビ後半の歌詞の「あなたに未体験あげる」の「未体験」と同じ事柄なのかもしれない。つまり「わたし」が「あなた」にした「あなた」にとっての「未体験」こそが、「超常な混沌」である、という考え方だ。あるいは「未体験」をきっかけにして「超常な混沌」が生じた、というような。

なんとなく雰囲気的には不穏そうな歌詞ではあるのだが、個人的にここの部分は、いわゆる日常的な鬱屈だとかとんでもないトラブルだとかではないんじゃないかと思う。日常的に抱えている問題なら「超常」とは言わない気がするし、巨大なトラブルなら歌詞が「静かにあなたを蝕んだ」とはならない気がする。

日常的な問題ではなく大きなトラブルでもないが、「混沌」を生む体験。この曲が恋に関する曲であること自体は一回聞けばわかることなので、そこから逆算すればなんとなく「あなた」の体験や「混沌」にある感情は想像ができるのではないだろうか。

「並行な信号」は交わらない二人の関係性を示すと考えていいだろう。そしてそこからの、「特異点に因り交わった」。「因り」の字は理由や原因を意味するので、「特異点」によって「交わった」という意味でいい。では「特異点」とは何かだが、この歌詞の中で考えるなら「あなた」が「未体験」を体験したまさにそのとき、というのが一つの解釈。

もう一つは「迷子のふたりはコンタクト」のことを「特異点」としているという解釈。「並行」というのは並んで進んでいることなので、同じような状態の二人を表現しているとすればこちらのほうが近い気はする。

「創造現実盲信症」を分解してみると、想像によって創った現実を盲目的に信じてしまう症状、となるだろう。現実を自分の都合のいいように信じ込んでいるような状態だろうか。

「感応性」とは知ったり関与したりすることで心が動かされる性質。ある人が思っていることを、自分も思ってしまうようなこと。妄想が移る、みたいなことも含むらしいが、この曲に関して別に病的なイメージを抱く必要はあまりないだろう。「本能」は生まれつき持っていると思われるある行動へと駆り立てる性質のことなので、合わせて意訳するなら、二人が同じような衝動を抱くようになった、という感じに受け取れる。

さらに直前の歌詞と合わせるなら、二人ともが都合のいい現実を想像して信じ込むような精神状態になっているという感じか。「あなた」が「わたし」からの影響を受けた結果として。

「シンドローム」~『全てを知りたい?』

「シンドローム」の内容はその次の歌詞にある「ひとりきり夜な夜な 空想描く」でいいだろう。それが「まるでグリモワ」のようであると。そこでなぜ、魔術書を意味する「グリモワ」という単語なのかというのは少し気になるところだ。SFでもないし。

とはいえ、魔術はそもそも望みを叶えるための超常的な力に頼った手段だ。つまり、「空想」の内容は望みそのものや望みを叶える方法のことなのだろうと考えることができる。

「サーチライト」はおそらく探る視線のような意味。おそらくは「あなた」のほうの。それを「避ける浮遊機」は、端的に「わたし」のことだろう。

「浮遊機」という単語から想像されるのはやはりUFOだと思うが、そのイメージは一直線に飛ぶのではなく浮かびながら不規則に動くようなものだろう。「あなた」にとって「わたし」がそのように見えているような状態。思わせぶりな態度だとかだろうか。

『「まだあなたは 全てを知りたい?」』というのはセリフのようだが実際に発された言葉かどうかはよくわからない。もし口に出していたとしても、「あなた」に聞こえるように言ったかどうかも微妙な感じだ。

そもそもの話なのだが、「点灯と消灯」以降ここまでの歌詞は「あなた」の心情が描かれているように読めるのだが、当然ながら主人公は「わたし」のほうだ。一人称の「わたし」が実際に登場している以上、ここはブレない。

そして「わたし」の視点で語っている以上、「あなた」の心情を事実としては語れないはずなのに、疑問の余地なく事実のように「あなた」の心情が語られているのがこの歌詞の奇妙な部分。

そういったことを踏まえてもう一度歌詞を読んでみると、これこそが「わたし」の「創造現実盲信症」なのではないか、という気さえしてくる。

つまりそうであればいい。そうであって欲しい。そのはずだと、「わたし」が「あなた」の心情を勝手に語っているのではないか。という解釈だ。

とはいえそれが本当に一方的な妄想に過ぎないとは、確定できない。本当にそうなのかもしれないが、結局のところはわからない。

つまり「まだあなたは 全てを知りたい?」という問いかけは「わたし」のイメージする「あなた」に対するマウントのようなところがあるのではないだろうか。その裏にあると思われる心理は、「あなた」は「わたし」が気になっているはず。「あなた」から来て欲しい、だ。

「エイリアン わたし」~「わたしは――」

最初の二行は一回目のサビと同じ歌詞だ。そこから、「瞳に映らない引力に」「気づいてよ わたしは――」と歌詞が続く。ここで「あなた」から「わたし」自身の話になるわけだ。まるでわかっているかのように「あなた」について語っていたが、実際にはわからない。その不安感が表された歌詞と考えていいと思う。

「わたしは――」の続きが、「エイリアン あなたのエイリアン」だ。「エイリアン」については最後に回すので、いったん飛ばして「触れあえば傷は 二度と消えない」。これもやはり不安感が表れているのだろう。関係を進展させたいが、なかなか思い切れない。二人の現在の関係性も示されているように思う。

「降りそそぐ無数の隕石も」「ときめく心には 届かない!」の部分で気になるのは、「も」だ。

ということは「降りそそぐ無数の隕石」に対応するものがあるのだと思うのだが、これはおそらく「篠突く雨」のことではないか。どちらも空から無数に降ってくるものという共通点がある。

そして「篠突く雨」が激しく雨が降っている様子であり、それがそのときの心情や取り巻く環境を表現しているのなら、「無数の隕石」ではそれどころではない。それほどの困難が訪れてさえ、「ときめく心には 届かない!」というわけだ。

「エイリアン ふたりは」~「あなたが 好き」

最初のところは、二人ともが「エイリアン」だと言っている。続いて、「高鳴る気持ちが抑えられない!」と来るが、ここはもうそのままだ。あえて難しいことを考える必要はないだろう。

しかしその次の「あなたは未確認生命体」は、いわばこの曲における答えに相当するような部分。

そして最後に、「異世界の果てまで あなたが 好き」となる。これは『アンドロメダアンドロメダ』から『ハウトゥワープ』を経て『エイリアンエイリアン』に至って、ついにはっきりとした言葉になったということだろう。「わたし」の中で。おそらくは「スキ」と「好き」の表記の違いも、心情的な段階の違いのようなものがあったのだと思う。自覚のレベルというか。

これでようやく歌詞の最後まで辿り着いたので、やはり「エイリアン」について考えておかなければならない。

「エイリアン」とはやはり宇宙人と考えていいだろう。ただし、『アンドロメダアンドロメダ』で解釈した宇宙人と、おそらく同じような意味合いも持っている。

だがまずはこの歌詞の中で考えてみよう。

「エイリアン」とは、まず「あなたの心を惑わせる」ものである。そして「わたし エイリアン」「あなたのエイリアン」という歌詞から、「わたし」自身のことを指している。と同時に「ふたりはエイリアン」「あなたは未確認生命体」とも言っていることから、「あなた」のことも指す。

「心を惑わせ」ている描写としては「点灯と消灯」から「避ける浮遊機」あたりまでだろうと思うが、ここは「あなた」の部分。しかし「わたし」のほうの心も「あなた」によって惑わされていたことが最後に示され、だから二人ともが「エイリアン」、「エイリアン」が二人だから『エイリアンエイリアン』というタイトルになっているのだと考えることができるだろう。

つまり「エイリアン」とは本当は何を思っているのかを知りたいがどうしてもわからず心が惑ってしまうような存在のことを表しているのだろう。

これだけでもいいのだが、『アンドロメダアンドロメダ』でも宇宙人という単語が出てきたので、そことの関連も考えておく。

「エイリアン」と宇宙人を同じものとして捉えるなら、『アンドロメダアンドロメダ』でした解釈を引き継げるはず。そしてそれができるであろうことも、この歌詞で示されている部分が確かにあった。

「交ざりあう宇宙の引力で」の歌詞だ。

なぜなら、『アンドロメダアンドロメダ』の歌詞を考察したとき、銀河を恋心、そして宇宙を銀河を含む心そのもののことではないかと解釈した。つまりその手の届かない領域を持つ人のことを宇宙を有する人という意味で宇宙人と言っており、その意味では「わたし」や「あなた」だけでなく全ての人が宇宙人なのだと。

「宇宙」が心なら、「交ざりあう宇宙の引力で」の歌詞もなんとなく理解できる気がしてくるのではないだろうか。

そして一方で、宇宙人が「エイリアン」と同じなら、逆に二人だけを取り出して『エイリアンエイリアン』とはできないのではないかという疑問の答えも歌詞にある。「あなたのエイリアン」だ。

つまり「エイリアン」イコール宇宙人とは、誰かにとってそのように見えるということであり、その理由、原因はもはや言うまでもなく恋心によるものである、ということだ。

だから、「ふたりはエイリアン」。二人ともが、互いにとって「エイリアン」なのだ。

ようやく『エイリアンエイリアン』の歌詞の考察、『Y』の考察を始めることができた。

なかなか踏ん切りがつかなかったときにリクエストを頂いたことで、こうしてスタートを切ることができたのは幸運というか、感謝に堪えない。

ナユタン星人の歌詞は解釈を重ねていくほどに理解できてくる感じがあるが、しかしそれでもいまだにまったく簡単ではない。それこそが楽しいポイントでもある。

次、といってもすぐに出せるかどうかはわからないが、『Y』の二曲目、『ミステリーサイクル』もやる予定だ。

というか全部いきたい。累計二桁くらいは心折れそうだけれども。